シド・ミードが描いた発光するオブジェ
今回は以前の記事で書いたシド・ミードが描いた発光するオブジェについての続報です。
シド・ミードが映画「ブレードランナー」のために描いたロサンゼルス2019シーンには、ブックストアーの壁面に発光する2つのオブジェが描かれています。


残念ながら、この2つのオブジェは映画のセットでは再現されず、オブジェの代わりに巨大なダクトが設置されました。

僕はこのダクトこそがシド・ミードのスケッチで左側に描かれているシリンダー状のオブジェの成れの果てではないかと考えました。
このダクトは、もともとシリンダー状のオブジェクトとして作成されたものの、作成途中で予算と強度の関係から上下逆さまにしダクトになったというのが僕の予想です。
Tom Southwellによるリドリーヴィルのブループリント
昨日、ブレードランナーのハードコアファンでありリドリー・ヴィルの1/6の模型をSketchupで再現しているベンジャミン・ウィグリーさんから、ブレードランナーに関する貴重な資料を頂戴しました。
それはブレードランナーのプロダクションデザイナーだったトム・サウスウェル氏からのリドリーヴィルのブループリントです。

右側がブックストア正面からの図面、左側がブックストア左側面の図面です。左側面にシド・ミードが描いたシリンダー状のオブジェクトが描かれています。(ミードが描いたスフィア状のオブジェクトは短いシリンダーオブジェクトに置き換えられています)
そう、シド・ミードが描いたシリンダー状の光るオブジェは当初は映画のセットでも再現する予定だったということです。
まだまだある!
再現されるはずだったシド・ミードのロサンゼルス2019
このブループリントを見るとシリンダーオブジェの他にもミードのスケッチを踏襲した箇所がいくつも見受けられます。
例えばブックストア正面に設置された4枚の電光掲示板は若干デザインが変更されていますがほぼシド・ミードのスケッチどおりです。最終的には映画版では全く違う形のネオンに置き換えられています。

ブループリント左端のチュウの眼工房もミードのスケッチをほぼ踏襲しています。興味深いのは映画版で追加されている入り口がすでに描かれていることです。

また、眼工房とシリンダーオブジェの間に描かれている複雑に入り組んだ配線や部品群も、ブループリントではミードのスケッチどおりに描かれています。残念ながら映画版ではほとんどが再現されませんでした。

これらを見ると、プロダクションデザインの段階ではシド・ミードの案をほぼ完全に再現する形で進んでいた事が分かります。残念なことにそれら殆どが映画版リドリーヴィルで再現されなかったのは予算や時間の問題があったからかもしれません。
もし、このブループリントどおりにリドリーヴィルが作られていたら映画のシーンはどのようになっていたかと思いを馳せるのもブレードランナーファンの楽しみの一つかもしれませんね。
もしブループリント通りにリドリーヴィルが作られていたら?
ブレードランナー・ホワイトドラゴンカット5ではシド・ミードのスケッチに描かれている要素を完全再現します。これがBenjamin Wigleyによるブループリントどおりにリドリーヴィルが出来ていたらという「もし」に対する回答の一つになれば幸いです。



