今回は4回シリーズで書いているシーン6「ヌードルバー」の2回目です。
バージョンごとに編集が違う
さて、「ワークプリント」と「ファイナルカット」の本シーンは、劇場公開版(US公開版・インターナショナル版)と比較すると若干の編集の違いがあります。
劇場公開版と比較してみたいと思います。
- ワークプリント
- 新聞を読むデッカードのアップが別のカットになっている。
- デッカードが注文した料理が映る。
- 屋台マスターが「あなたを逮捕すると言っています」と言うシーンで、屋台マスターではなくヌードルを食べるデッカードが映る。
- ファイナルカット
- 新聞を読んでいるデッカードがヌードルバーの空き具合を見るカットがない。
- ヌードルバー全体を写すカットがない。
- 新聞を読んでいるデッカードが頭上を見上げるカットがない。
- 夜空を漂うブリンプのカットの尺が若干短い
- ヌードルバーの客が料金を支払った後に、屋台マスターからお釣りをもらうカットがない。
ポール・M・サイモンの「メイキンング・オブ・ブレードランナー」には、ワークプリントにあるヌードルを食べるデッカードは、彼がヌードルをうまく食べることができなかったためカットされたといった記述ががります。
確かにデッカードのヌードルの食べ方はダメダメです。日本のヌードルはすすらなければいけないのに、スパゲティーを食べる様にヌードルを一度で全部口に入れようとしています。これじゃあ口からはみ出すのは当然です。
ブリンプはどこを漂っているのか?
さて、前述したように「ファイナルカット」ではデッカードが頭上を見上げるカットが丸ごとなくなっています。この編集だと単に尺が短くなっただけではなく、この後に続く夜空に漂うブリンプのシーンの意味合いが変わってしまうことになります。
従来の編集でのブリンプのシーンは、デッカードが頭上を見上げるとそこにブリンプが漂っているという流れでした。つまりブリンプ・シーンはデッカードの視点という事になります。これはブリンプがデッカードの視線の先に漂っている事を暗示させるモンタージュ的な手法です。
しかし、ファイナルカットでは夜空を見上げるデッカードのカットがなくなり、新聞を読んでいるデッカードのカットに続き、いきなりブリンプが映し出される様に変更されました。この流れだと、ブリンプ・シーンは2019年のロサンゼルスを表現するモンタージュ・カットの一つとしての扱いになりました。この流れではブリンプがデッカードの視線の先に漂っていることは暗示されません。この違いは非常に大きいと感じています。
WDC5ではこの頭上を見上げるデッカードのシーンを復活させ、ブリンプのシーンをデッカードの視点映像としました。
また、従来のブリンプのカットはデッカードの視点とするにはあまりにもブリンプに近すぎるカットのため、別のカットに置き換えています。
さて、今回はここまでです。
(続く)
<シーン6:ヌードルバー>
ファイナルカット(2007年制作?)はディレクターズ カット 最終版(1992年制作?)にシーンが追加され,修正点も多いと聞いていましたが,逆の場合もあるんですね……。