今回は4回シリーズで書いているシーン6「ヌードルバー」の3回目です。
シド・ミードのロサンゼルス2019
さて、ブレードランナーの未使用カットの中にはヌードルバーの全体を映しているカットがあります。
このシーンでは、奥のビルの壁面に「TOSHIBA」看板の一部を見る事ができます。しかしシド・ミードのプロダクション・スケッチではビルの壁面にあるのは2つの光るオブジェです。
シド・ミードの描いたロサンゼルスの完全再現を目指すホワイトドラゴンカットでは、本シーンのTOSHIBA看板をこのオブジェに置き換えています。
デッカードはいつ割り箸を割ったのか?
今回編集していてちょっと気になった事が一つあります。それは、
デッカードはいつ割り箸を割ったのか?
とうこと(笑)。
まあ、割り箸を割るタイミングなんてストーリー上どうでもいい事なんですが、タイムラインに沿って編集しているとこんな些細なことが気になりだすんですよね。というのもデッカードが割り箸を割るシーンが未使用カットの中にあるんですが、そのカットと映画本編のカットが矛盾するんです。
まずは、「ファイナルカット」のヌードルバーシーンです。
デッカードが席につき、寿司マスターが料理を出した後、デッカードの割り箸は既に割れています。
次は、「ワークプリント」のみに収録されている寿司マスターが料理を出すシーン
寿司マスターが料理を出した時に割り箸はすでに割れています。つまり、デッカードは料理が出る前に割り箸を割ったことになります。
次は、未使用カットにあるデッカードが割り箸を割るシーン
デッカードが割り箸を割る時、すでに料理は出ています。これだとデッカードは料理が出た後に割り箸を割ったことになります。
まとめてみると、
<ワークプリント>デッカードは料理が出る前に割り箸を割った。
<未使用カット>デッカードは料理が出た後に割り箸を割った。
おそらく何度もテイクを重ねるうちに、この様な矛盾が生じたのだと思います。さあ、どちらが正しいのか?
僕が注目したのはこの後のカットです。
デッカードは割った箸を互いに擦っています。これって最近では日本でも滅多に見ないですが、僕が学生の頃に街の食堂に行くとよく見かける光景でした。割った箸を互いに擦ってバリを取っているんです。この時、とれた細かいバリが下に落ちるので料理が出る直前に箸のバリ取りをする人が多かった記憶があります。
実は、もう一つ未公開カットの中に箸を割るデッカードの手元を映したカットがあります。
これをみると、デッカードは料理が出される直前に箸を割っています。
これらのカットを総合的に見て、デッカードは寿司マスターが料理を持ってくるのを見て、料理の出る直前に箸を割ったとするのが正解の様な気がします。結局バリ取りは料理の上で行われていますが、、、(笑)
ということで、ホワイトドラゴンカットではデッカードが箸を割るカットを料理が出される直前に挿入することにしました。挿入したカットはデッカードを真正面から写したカットです。
ただし、このカットでは既に料理が出されているのでトリミングして料理部分を見えなくしました。また、左手は料理の皿を動かす動作をしているので左手のみスローモーションにして動きを少なくしています。
さて、今回はここまでです。
(続く)
<シーン6:ヌードルバー>