映画で再現されなかったシド・ミードの描いたチャイナタウンをCGIで完全再現!
今回はパート4、CGI完成までの道のりをまとめました。
シド・ミードのスケッチの元となった屋外セットの再現
シド・ミードのチャイナタウンをCGIで再現するにあたって僕が最初にやったのは、ミードのプロダクションスケッチの元となった場所の再現でした。
恐らく、ミードはまずスケッチの元にになる場所を描き、その上に未来の要素を重ねていったと考えられます。僕もミードと同じ工程でCGIを作成しようという試みです。
僕は、ミードがチャイナタウンを描くにあたって元にした場所はワーナー・ブラザーススタジオの野外撮影場所「ニューヨークストリート」だと当たりをつけたのですが、その記事を読んでくれたトム・サウスウエル氏(ブレードランナーのプロダクション・イラストレーター)から、それで間違いない旨のコメントを頂戴しました。
早速、ニューヨークストリートの原寸大のCGI化に取り組みました。リドリーヴィルのCGI化を行った際には撮影当時のブループリントから寸法を割り出して建物を作ったのですが、今回はオープンストリートマップからニューヨークストリートの原寸大の3Dモデルのデータを入手しました。
この実寸大の3DモデルにGoogleストリートビューからキャプチャした建物のテクスチャを貼り付けラフな3Dを作成しました。
さて、ミードのスケッチを見ると建物の一階部分はニューヨークストリートの建物の要素を残し、二階より上の部分は未来的な要素に置き換わっていることがわかります。そこで3Dモデルの一階部分はニューヨークストリートの要素を忠実に作り込み、二階より上の部分はGoogleストリートビューのテクスチャのままとしました。
ミードの描いた未来的要素
ミードのスケッチを見ると、二階より上の部分には色々な機械が張り付いていることがわかります。ポール・M・サイモンの「Future Noir メイキングオブブレードランナー」にも、ミードがイメージした未来象は新しい建物と古い建物が混在し、古い建物の壁面には未来的な要素が多数後付けされているといったことが書かれていました。
ミードが描いた未来的要素は細かな部分まで確認できませんが、様々な大きさの四角い部品が整然と壁に貼り付けられていることがわかります。この後付けされた未来的要素を二階より上の部分に作成しました。
謎の中国語の看板
作成の最後は中国語の看板の作成です。ミードの描いたチャイナタウンのプロダクションスケッチには中国語で書かれた電光看板が多数描かれています。
本来はこれらの看板の中国語を解読して同じものを作るべきなのですが、残念ながら解読することは不可能でした。ミードは忠実に漢字を再現したのではなく大まかな形だけを再現したようです。
最終的に、僕も雰囲気だけ似た漢字で代用することにしました。
チャイナタウン特別版
さて、最後に出来上がったチャイナタウンの3Dモデルでアニメーションを作成してみました。このシーンはレオンとロイがチュウの眼工房にいくために待ち合わせをするシーンのためのものです。よってポリススピナーがこの場所から飛び立つことはないのですが、特別にチャイナタウンから飛び立つポリススピナーをアニメーションにしてみました。
ホワイトドラゴンカット本編には組み込まれない特別バージョンです。
次のステップ
さて、次のステップは実写シーンとの合成です。
地下鉄の入り口から階段を登ってきたレオンがロイと合流しチュウの眼工房へと向かいます。うまく合成できるかお楽しみに。