今回は4回シリーズで書いているシーン6「ヌードルバー」の最終回です。
ブレードランナーファンはモブ達の夢を見るか?
ブレードランナーの魅力の一つは街という文化を構成する情報の多さだと思うのですが、個性的なモブ・キャラクター(背景キャラクター)もそんな高解像度の情報の一つです。
WDCを編集していて未使用カットの一つ一つをみていく中で、僕は数多くの個性的なモブ・キャラクター達に出会ってきました。あまりにも魅力的すぎて名もなき彼ら彼女らが頭から離れない事もあります。
本来モブ・キャラクターは映画の舞台を構成する要素の一つで、直接ストーリーには関わらないものですが、ホワイトドラゴンカットではそんな彼等に少しだけ光を当てたいと思っています。
では早速、本シーンで気になったモブ・キャラクターを4人紹介します。
まず一人目はヌードルバーで食事を食べ終わりお金を払って去っていく男性です。この男性の席にデッカードは座ります。この男性は従来のバージョンでも屋台マスターがデッカードを手招きするシーンで写っているのですが、未使用カットには彼の顔がはっきりと分かるカットがあります。
体格の大きさに反して、少し優しげな表情をしているところが魅力です。

二人目は彼の手前に座っている立派な髭を蓄えた老人です。スキー帽とゴーグルをつけています。
未使用カットでは、デッカードの右横に座っている姿が確認できます。

ホワイトドラゴンカットでは本シーンに大量のスモークを合成しているので彼の姿ははっきりと見ることはできなくなっているのですが、オリジナルの状態で見てみるとショーウインドウの向こうに浮かび上がる彼の顔が少し不気味に写ります。いいキャラしてますよね。
三人目と四人目はペアで登場です。
デッカードの左側に座っている二人の女性です。

画面手前の東洋系の女性は緑と黄色のラフなジャンパーを着ていますが、それとは対照的になベール付きのドレッシーな帽子をかっぶっています。この違和感が彼女に独特の雰囲気を醸し出しています。
画面後ろの女性はばりばりのパンクヘアーです。着ているのはタキシードの様ですがアバンギャルドな着こなしをしています。彼女かっこいいです。
さて、未使用シーンに彼女達がアップで写っているものがあります。未使用シーンというよりは撮影の合間に撮られたスナップフィルムのようなものです。当然リドリー・スコットは監督していない映像だと思います。

このカットですが、画角がヌードルバーに駆け込む際のデッカードの視点とピタリと合うんですよ。
というわけで、デッカードの視点として二人を登場させることにしました。残念ながら本シーンの色はほとんど脱色してしまっていますが、なんとか元の色を復活させました。
さて、映画「ブレードランナー」には魅力的なモブ・キャラクター達が他にも数多く登場します。そんな彼らについて、いつかまた書いてみたいと思います。
4回にわたって書いてきた「ヌードルバー」シーンの記事は今回が最終回です。次回は別のシーンについて書きます。お楽しみに。
<シーン6:ヌードルバー>