今回はシーン4「冥界都市」についてです。
新たなる発見!ブレードランナーの未使用カット
「ブレードランナー・ホワイトドラゴンカット5」のHD化に際し、HD解像度にアップスケールした未使用カットをシーンごとに整理しています。
そんな中、今までオリジナル版との違いに気づいていなかった未使用カットを発見しました。
映画冒頭で描かれ冥界都市のシーンの未使用カットです。オリジナル版とどこが違うかお分かりでしょうか?
そう、画面手前に飛んでくるスピナーの数が違います。オリジナル版では左側に1機ですが未使用カットでは右側にもう1機描かれています。これほど大きな差異があるにもかかわらず、今までその違いに全く気づかずにいました。
この未使用カットは「デンジャラスデイズ」ドキュメンタリーのSFXのチャプターに収録されていたものです。
スピナーのレンズフレアと塔から噴き出る炎はまだ合成されていない状態で、更に色調整もされていないので作成途中のものと思われます。また、この未使用カットをオリジナル版と比較してみると、右側のスピナー以外は全く同じでした。
もともとスピナー2機で作成されたものの最終的に右側の1機は削除されたものと思われます。
元の設定ではスピナーは1機?それとも2機?
では、もともとの設定ではスピナーは1機だったのか2機だったのか?
念のため1981年2月と1980年7月の脚本を確認してみました。しかし残念ながらスピナーについての記述はありませんでした。まあ、スピナー好きの僕の意見としては、画面に登場するスピナーの数は多いに越したことはありません。ホワイトドラゴンカット5はこの新発見の未使用カットを使う事にしました。
但し前述の様に、本カットは色調整されていない上にレンズフレアも合成されていません。また画質もそれほど良くありません。そこで未使用カットの右側のスピナーだけをマスクで切り出しオリジナル版に合成する事にしました。レンズフレアも新たに作成し合成しています。
ダグラス・トランブルのSFXへの半端ないこだわり
さて、今回の合成作業をやってみて気づいた事、それは「ダグラス・トランブルのSFXはこだわりが凄すぎる!」ということ。
そう感じたのは次の2点
- レンズフレアの明るさに強弱がついている。
スピナーのレンズフレアはスピナーが手前に近づくほど明るくなっていくと思っていたのですが、スピナーが画面から消える30フレーム手前が一番明るく、その前後では徐々に暗くなっていきます。
これにより、一瞬スピナーのライトがカメラのレンズに差し込んだ様な効果が得られています。 - スピナーが画面から消える瞬間に大きなレンズフレアが3フレーム映る。
スピナーがカメラを横切り画面から消える瞬間に縦長の大きなフレアが3フレーム写ります。これによりライトがカメラのレンズに反射しているような効果が得られています。
こんなこだわりがあったことは、今回スピナーとレンズフレアの合成作業を行なわなければ気づかなかったことです。そりゃあリアリティが出るはずです。
今回、オリジナル版に新たに合成した右側のスピナーのレンズフレア作成に於いては、上記のこだわりを完全再現しました。ダグラス・トランブルのこだわりに少しでも近づいていればいいなと思っています。
もう一つの珍しい未使用カット
今回の編集では後半にもう一つの未使用カットの追加を行っています。タイレルピラミッドの屋上を映した珍しいカットです。
このフッテージも未編集の状態だったため色調整を行い、更にバックに冥界都市を合成して仕上げました。
本カットを挿入した事により、残念ながら後半部分が冗長になってしまいました。最終的にはもう少し短く編集し直すかもしれません。
<シーン4 : 冥界都市>