アレックス・ノースに敬意を評し

「もし」を現実にする。

リジェクトされたサウンドトラック

リジェクトされたサウンドトラック

スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」は、その難解なストーリーと当時としては革新的な特殊効果が有名だが、クラッシック音楽を使ったサウンドトラックが語られることも多い映画だ。
しかし、現在知られている「ツァラトゥストラはかく語りき」「美しき青きドナウ」やリゲティーの前衛曲とは別に、アレックス・ノース作曲によるオリジナル・サウンドトラックがあったことをご存知だろうか?

アレックス・ノースは「スパルタカス(1960年)」「クレオパトラ(1963年)」等の史劇大作でダイナミックなサウンドトラックを書いた米国の作曲家だ。1990年の映画「ゴースト/ニューヨークの幻」の主題歌に採用され大ヒットした「アンチェインド・メロディ」も、もともとは彼が1955年の映画「アンチェインド」(日本未公開)のために書いた曲だ。

キューブリックは「スパルタカス」でノースと一緒に仕事をしている。これが縁でキューブリックは「2001年」のサウンドトラックをノースに熱烈に依頼し、これを受けノースも作曲に精力的に取り組んでいたようだ。
実際、ノースは「2001年」のサウンドトラックの録音を行なった際、過労で倒れてしまい入院中の病院から録音スタジオに通っていた時期もあった。

そんな中、キューブリックは米国への船旅の間に、手持ちのクラッシック曲を使い2001年のサウンドトラックを完成させてしまう。
ノースが自分のサウンドトラックがリジェクトされたことを知ったのは、「2001年」の試写を観たときだったと言われている。

「もし」を現実にする

「もし」を現実にする

2000年代になってノースが録音したサウンドトラックのマスターテープが発見された。そして、2007年にサウンドトラック専門レーベルのINTRADA(米)が、ノース版サウンドトラックを遂にリリース

残念ながらノースが録音したのは映画中盤までのものだったため、後半のノース版サウンドトラックは存在しない。しかし、このCDの存在は「2001年」のもう一つの可能性について私達に問いかけている。

「もし、ノースのサウンドトラックが使用されていたら2001年はどの様な映画になっていたのか?」

「2001:a space odyssey white dragon cut(以後「WDC」と記載)」は、この「もし」を現実のものにする。
ノースの録音がある部分は、全てノース版に差し替える。更に、ボーマンが年老いていくシーンは、現在のリゲティ―の曲からレイフ・ヴォーン・ウィリアムズの「南極交響曲」に差し替える。このシーンは「南極交響曲」を使用したバージョンも作られていたというのだ。

結論を言うと、「2001年」のサウンドトラックは現在のもの以外考えられない。人猿とモノリスのファーストコンタクトのシーンはリゲティ―でなければならないし、パンナムのスペースシャトルが宇宙を舞うシーンには「ブルー・ダニューブ」が流れていなければならない。

しかし、「2001年」のサウンドトラックに精力的に取り組んだアレックス・ノースに敬意を評し、WDCはノース版2001年をリリースする。